忍者ブログ
「官能短歌・性愛短歌・エロ短歌」といわれる色事を主題に啾(な)き疼(うず)く濡れ場を詠んだ愛の和歌とその官能短歌による歌物語
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 乱れ咲き散り敷く桜妖しきに踏み惑ひたる春の夢見し


都大路を西に入りたる静もる角に人空くななる屋敷ありて、主亡き後に残されし姉妹住みけり。
姉の春香の伯爵のもとに嫁ぎしも、里の父母続けて亡くなりし上に、子なき故をもって三十歳にならん時離縁せられて帰り来しがまま三とせになりぬ。妹夏美は二十八にならむ程なるも未だ嫁がず、昔は人集めして茶会など催せし広き屋敷に二人のみにて住まいしが、庭に桜の盛んなるが幾本かありて、春はまことに妖艶なりき。
池に散りて花筏となれるを惜しみていたるに、文あり。
 「別るるも時移ろへば安かるやこころ何処に向かひしならむ
 庭の桜は如何に」
別れし夫昭雄の手なり。もはや未練は無きものの、懐かしからぬこともなければ、
 「過ぎ行きし春を惜しめど散りし後訪ふ人も無き庭ぞ静けし」
とのみ返したり。
二日ほどありて、月のおぼろなる宵、昭雄来たりて、別れしを詫びて、われもまた父亡くなりて家に縛らるる事なきに復縁するに仔細なし、といふ。
いまさらの勝手の言い草と憤らるれど、己が非を詫びる気弱なる言の葉に、座敷に迎えれば、もともと馴染みて嫌ひし人ではなし、過ぎし日のことを互いに語りつつあるに、やがて夏美の出だせる酒の接待に時を過ごしつ。
難しき話ならむにお二人で、と言葉かけ、夏見の自室に引き下がりし後、離れ座敷に移りて語らふ。
夫婦たりし時、二人して歌詠み合ひていたれば、
 睦み合ひ過ごせる日々の懐かしく独り寝る夜は苦しかりけり (昭雄)
 苦しくもわれはしらじなみとせごし恨み寝る夜の明くることなし (春香)
など交わしゐたり。


PR
この記事にコメントする
           
お名前
タイトル
メール(非公開)
URL
文字色
絵文字 Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
コメント
パスワード   コメント編集に必要です
 管理人のみ閲覧
この記事へのトラックバック
トラックバックURL:
リンク
お世話になっているサイトです
ブログ村
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(愛欲)へ
にほんブログ村 にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ
ポチッと押していただけると嬉しい
カレンダー
08 2024/09 10
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
最新コメント
最新トラックバック
ブログ内検索
プロフィール
HN:
すきもの
性別:
男性
バーコード
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Copyright ©  -- ==春歌啾疼== --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Material by White Board

powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]