忍者ブログ
「官能短歌・性愛短歌・エロ短歌」といわれる色事を主題に啾(な)き疼(うず)く濡れ場を詠んだ愛の和歌とその官能短歌による歌物語
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

その年の秋の日、英二と郁代はやっと念願かなって旅に出ことができた。
待ち合わせは、名古屋で、名古屋からは、3日間乗り放題の「南紀・熊野古道フリーきっぷ・中辺路コース」を利用しての旅になった。

  きれいだと鏡の自分に言い聞かせ 愛しい人の元へと走る

名古屋駅での再会。
  待ち合わせ君を見つけて駆け出せば 勢いあまり胸に飛び込む
  走り寄り急きて息きれいひかくを耳に優しく唇に受く
  抱きつける勢(はづ)みとみせて頬寄せぬ悦ぶ息で耳に口づけ

この日、郁代の服装は、いつもより若やいだスカート姿だった。駅で再会を果たし、久しぶりの逢う瀬を迎える二人の顔には、笑みが溢れている。
改札口にいそぎながらも、郁代は英二の伸び始めたあごひげに手を伸ばし、「触っていい?」と言いかけて、「ふふっ、ふさふさだね!」とつまんだり撫でたりした。

10時00分名古屋発の特急「ワイドビュー南紀3号」で和歌山県新宮へ向かう。

並んで座り、郁代は英二の肩にもたれかかっている。
「逢いたかった!」とまたお互いに手を握り合う。

  君想う同じ分だけ想われたい 腕を絡めて小さく甘える
  握られた手の温もりに身が震え 猛る気持ちで君を見つめる

盛んなおしゃべりのあと、二人はただ見つめ合っていたりする。
11時30分松坂を過ぎてから、車内販売の松坂の駅弁「元祖特選牛肉弁当」が手に入るのでこれで昼食をとる。
この弁当は独特の牛顔と特大の駅弁マークを描いた大きめの容器で、中身はたくさんの白御飯と、ソースの香りが広がりタレを絡めた牛ステーキが長方形の容器を占め、他はプライドポテト、煮物、佃煮など添え物というシンプルな駅弁。 牛駅弁の元祖で昭和34年発売当初は日本一高価な駅弁だったというが、全国の駅弁の中でも超ロングセラーだそうだ。

「少しだけでも飲んでよ!」と英二はビールを郁代に無理強いする。
缶ビールで乾杯をすると、「うん、えーちゃんと飲むとおいしい!」と郁代もまんざらでない飲みっぷり。

食事のあと車内では、ぼんやり車窓に目をやり、手を組み指を握り、時に見詰めあう二人だけのゆったりした時間が流れる。
トンネルとトンネルの合間に海が見えるなど、眼を飽きさせない風景が連続し、また、入り江が奥まったところに小さな漁港が見えたり、集落の中に小さな駅があったりと険しい山並みと海岸が接していることから、ダイナミックな車窓風景が現れる。

そんな景色を眺めながら、英二が郁代の手を取ると、自分の股間に近づけ郁代の手の甲を押し付けて、
「こんなに硬くなってるよ!」とささやく。
「もう、えーちゃんたら! ここではダメ!」郁代は笑い顔で英二を睨む。
「このまま、ギュッと押してるだけでいいよ。」
「あーん、また硬くなって動いてる!」

  堅きもの身に受ける時待ちきれずその熱く勃つを握れよ
  促されそっと握れば手に固くうごめくものは何を望むか

そんな戯れを楽しんでいるうちに13時25分に新宮に着く。

和歌山県・奈良県・三重県にまたがる3つの霊場(吉野・大峰、熊野三山、高野山)と参詣道(熊野参詣道、大峯奥駈道、高野山町石道)は、2004年に「世界遺産・紀伊山地の霊場と参詣道」として登録された。霊場「熊野三山」には、熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社、青岸渡寺、那智大滝、那智原始林、補陀洛山寺が登録されている。

新宮駅からタクシーで5分の、熊野三山のひとつ、「熊野速玉大社」へ向かう。「熊野速玉大社」は、熊野三所権現が最初に降臨した元宮である神倉山に祀られていた神を、現在の社地に移し、ここを新宮と呼んだという。

鮮やかな朱塗りの鳥居を目に飛び込んで、進むと、右手に朱塗りの神宝館があり、左手には梛(なぎ)の大樹が枝を広げている。平安末期に熊野三山造営奉行を務めた平重盛(清盛の嫡男)の手植えと伝えられていて、推定樹齢1000年、梛としては日本最大という。この葉がまた変わっていて、縦に細い平行脈が多数あって、主脈がない。その一風変わった構造のため、ナギの葉は、横には簡単に裂くことがでるが、縦には枯れ葉であってもなかなかちぎることができない。この葉の丈夫さにあやかって男女の縁が切れないようにと女性が葉を鏡の裏に入れる習俗があったという話を英二は語り聞かせる。

「えーちゃんとはずーっと結ばれたままでいたいから」と、郁代はその葉を「大切にしよう!」と一枚ノートに挟む。

礼殿の前には第一本社と第二本社が並んでいる。第一本社は「結宮(むすびのみや)」といい、熊野結大神(くまのむすびのおおかみ。那智の主神)を祀っている。第二本社は「速玉宮(はやたまぐう)」といい、熊野速玉大神(くまのはやたまのおおかみ)を祀っている。
この二神、速玉が男神で、結が女神ということで、夫婦神と考えられ、もともとは一社殿に祀られていたという。

  大吉のおみくじ宮木に括りつけ 二人分の幸せ願う
  括る籤やがて願ひの花咲きてふたり手とれる旅や愉しき

ここから歩いて約20分「新宮城址」入り口に着く。丹鶴城公園と呼ばれているこの場所に、かつてお城があったという。思ったより石段が長く続く。熊野川を背にした高台にあり、城跡には石塁が残る。標高42mからの眺望はすばらしい。
そこに、与謝野寛(鉄幹)の歌碑がある。
「高く立ち秋の熊野の海を見て誰そ涙すや城の夕べに」

新宮城址から10分ほど、国の天然記念物「浮島の森」に着く。島全体が沼の中に浮いていて、北方系・南方系を含む130種の植物が混生し森をつくっている。

美女が大蛇に飲み込まれたという悲しい伝説が残る「蛇の穴(じゃのがま)」が浮島の中央部にあって上田秋成がこの伝説を元に雨月物語「蛇性の淫」を書いたといわれている。

最後に駅近くの「徐福公園」に立ち寄る。中国風の楼門がひと際鮮やか。徐福は今から2200年ほど前、秦の始皇帝の命により、東方海上の三神山にあるという不老不死の霊薬を求めて、熊野に渡来したと伝えられている。境内には徐福の墓や、7人の重臣の墓が建立されている。
2時間あまり歩いて、15時55分発の本宮大社行きバスに乗る。

バスは熊野川を右手に進む。
16時56分 川湯温泉「ふじやまえ」バス停に到着、下車。この日の泊まりは、その「富士屋」。川湯の真ん前にある。

玄関から中にかけてあちこちに花がいけてあるのも和む。
部屋に入ると二人は待ちきれなかったかのようにいきなり抱きしめあい熱いキスを重ねる。

  抱きしめるそのぬくもりが身にしみてあなたの体さらに抱きしめる
 
「ふふっ、今日はゆっくりできるね」と、もつれるように畳に転がり体を互いに探り合う。
「あーん、まだ着たままよ。あ・と・で! 先にお風呂にしたら。」と郁代はいい、浴衣を出してきて、英二を着替えさせる。
英二がズボンを脱いだところで郁代は浴衣を羽織らせながら、英二の膨らんだ股間をトントンと叩いて
「まぁ元気! あとでゆっくりご挨拶しますからね!」という。

まずは宿の前の川湯に向かう。
川湯温泉は、川原に面して温泉宿が並んでいて、まさに名前通りに、川原の石を掘ると温泉が湧いてくる。川の水とちょうどよく混じり合うように調節して、そこに浸かっているひとたちがたくさんいる。
冬には大きな露天風呂、仙人風呂を作り、川湯温泉の名物となっているらしい。川原でしばらく遊ぶ。郁代は水着を持ってこなかったので、「川湯」に浸かることはできなかったけれど、裾をまくりあげて川に入ると確かに熱い温泉が湧いている。
少しぬるっとするお湯で、歩き疲れた体を休めるのに温泉がちょうどいい
それから宿の風呂場に向かう。
風呂のあと浴衣になるという郁代に、英二は浴衣の下は何もつけないでいるよう迫っていた。
ゆったりとそれぞれ湯につかり、その姿で部屋に帰ってくると食事の用意がされている。
夕食は豪華で、熊野三山地域唯一の蔵元の造る「熊野三山」という酒を酌み交わしながらゆっくり海の幸、山の幸を満喫できそう。
竹の壁と間接照明で、柔らかく落ち着いた部屋で、くつろいだ食事になった。
 
  一切の後悔もないこの瞬間 素直な心を君に預ける
  後悔のないこの瞬間を慶びて君の心に躰重ねる



PR
この記事にコメントする
           
お名前
タイトル
メール(非公開)
URL
文字色
絵文字 Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
コメント
パスワード   コメント編集に必要です
 管理人のみ閲覧
リンク
お世話になっているサイトです
ブログ村
にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(愛欲)へ
にほんブログ村 にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ
ポチッと押していただけると嬉しい
カレンダー
08 2024/09 10
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
最新コメント
最新トラックバック
ブログ内検索
プロフィール
HN:
すきもの
性別:
男性
バーコード
カウンター
アクセス解析
忍者アナライズ
Copyright ©  -- ==春歌啾疼== --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Material by White Board

powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]