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「官能短歌・性愛短歌・エロ短歌」といわれる色事を主題に啾(な)き疼(うず)く濡れ場を詠んだ愛の和歌とその官能短歌による歌物語
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郁代と英二とにやっとのことで実際に出会う機会が訪れたのは、メールの交際をはじめて一年半ほど経っていただろうか。
待ち合わせていたのは、木曽路の南端の駅だった。
逢う前は二人とも実際に顔を合わせるのはそれぞれが期待外れでしらけてしまったらどうしようと不安を抱いていた。
互いに「ドキドキだね」とメールしあっていたが、改札口では、はじめて顔を合わせるというのに、二人とも笑顔で、旧知の仲のように「やぁ」と手を挙げて駆け寄った。
 
・・・滑り込む電車の音に深呼吸 お願い最高の笑顔を私に・・・
 
会うことを決めてから、郁代は遅いようで早く、早いようで遅く過ぎていく時間を不安と期待で気持ちを揺らしながら過ごしていた。
「神様お願い。今日だけ、今だけでいい。ちょっぴりでいいからステキな笑顔を与えて下さい・・・」
逢いたいと強く願ってはいたものの、いざその時がくると自分に自信が持てない郁代は怖くて仕方がなかった。
英二さんはどう思うのだろう・・・こんな私を見て。
せめて今日だけでいいから、ステキな女性になれたらと神様に切なく願いながら電車が入ってくるのを待っていたのだった。
 
降りてくる人々の中から英二の姿はすぐにみわけられた。
目が合った瞬間、それまでの不安はうそのように消え去り、硬かった心が優しく溶けていった。
「やっと逢えたね」素直にそして自然に英二にそう言えた。
 
 
駅から数分の川の左岸に公園があり、まずは二人はそこに向かった。
公園の入口が解りずらく迷いながらではあったが、たどり着いた公園の中には「女夫岩」といわれる見事に男と女のシンボルの形している自然石が対に小道を挟んで置かれていた。男岩の高さは約8m、女岩が高さm-1.jpg4mで、自然石のものでは日本一というもの。
英二がまずここを訪れることにしたのは、たくらみだったのだろうか。
二人でこの巨大な陰陽石をみていると、なんともこの形である不思議さと二人の仲の不思議さとを感じるのだった。
この時にはもう二人の間には初めて出会うという心理的隔たりはなくなっていた。
傍らの碑には、吉野秀雄の歌が刻まれている。
「男(お)の根岩 女(め)の陰石(ほといし)にきほえとも 道をへだてて合はなくもあはれなり」とあるが、これが「合う」姿は壮観であろう。   
郁代は、その大きさにか、形のリアルさに驚いて、「きゃー」っと口元を抑えて笑ってしまった。
傍らには和合の神を祀る小さな社祠があり、二人並んでお参りした。
 
・・・揺るぎなき巨石の元で手をあわす 重なる想い永遠(とわ)であらめと・・・
 
何故英二がこの公園へ誘ったのか郁代はまったくわからなかった。ただ笑いながら英二が指を指す大きな岩を見てその形が意味するものを初めて知った。
戸惑いと言うよりは英二のいたずらな心が郁代にはとてもいとおしく思えたのだった。
長い年月を向かいあいながらたたずんできた巨石。自然のいたずらと言うには交わる事の出来ない二人の切なさも感じないわけにはいかなかった。
それでもお互い揺るがず永遠に並んで語らう二つに、郁代は自分達を重ねてその元にある小さな祠に手を合わせていた。
英二との想いがどうか永遠に続きますようにと・・・。
 
このあと向かったのは、木曽路の最南端に位置する宿場町「馬籠宿」。ここは明治28年の大火で、江戸時代の建物はその姿を消してしまったが、現在は地元の人々の努力で当時の町並みが再現されて江戸時代を彷彿とさせる家並みが連なっている。
二人並んで平日の観光客の少ない通りをゆっくり歩いた。
通りの中央は石畳が敷き詰められ、両脇には格子のある民家、資料館、茶屋、水車、土産物店などが並んで風情ある雰囲気を醸し出している。ここは、文豪島崎藤村のふるさとで、「夜明け前」の舞台になったことでも知られ、宿場のほぼ中央の本陣跡地には「藤村記念館」が建てられている。
二人は宿場を抜けて、妻籠方面への道をたどった。
 
・・・歩を合わせ並び行く道石畳 指差す先に八重のドクダミ・・・
 
雲が多く雨が落ちてきそうな日だった。
「少し肌寒いね」そう言った郁代に英二は自分が手に持っていた上着をそっと掛けてくれた。
何気ないそのしぐさが郁代にはとてもうれしく思えて心まで暖かくなった。
ずっと前からこうして二人で歩んできていたような錯覚もする。それは出会ったばかりだというのに何もかもが自然に流れていくからだった。
石畳の道の横には手入れが行き届いた花が綺麗に咲いていた。ただ、二人の目に止まったものはひそやかに咲く山野草だった。
白い小さな花が八重に咲くドクダミ・・・。きっとこの花を見るたび今日の事を思い出すんだろうなと、郁代には忘れられない思い出の花になるのだった。
 
 
 
馬籠宿を過ぎたあたりから見える美しい山々の重なりと青い田と空とが作る景観はいかにも落ち着いた田園風景で、そこに二人で身を置くとそれがとてもともにいるにふさわしい場面にみえたのだった。
「こんなところに二人で住みたい。」と、郁代は英二に寄り添ってつぶやく。
「これから行く庵もこんなところだよ。山を背に、田圃と杉と竹に囲まれている。」
眺める二人を風が心地よく包んでいた。
 
・・・道端にひっそりと立つ道祖神 二人の歩みを優しく見守る・・・
 
道を引き返し、蕎麦屋で取り留めのない話を続け、寄り添うように座った二人は手を取り合い、指を絡めていた。
指と指は互いに求め合うように絡み付き、それが身も心も一つになるような感覚を導いていた。
 
・・・絡めあう指先伝うぬくもりが 二人を一つに溶け合わす・・・
 
その絡めた指をほどけずにその心地よさに酔っているうちに日は暮れかかった。
 
・・・一時も離さず繋ぐ君の手が 心を熱く導いていく・・・
 
英二の庵にたどり着いた時は夜も深まっていた。
枝折戸を押して中にはいると、庵は二間ほどの小さな茶室づくりで、ダイニングキッチンだけが現代風になっていた。
玄関を入ったところで二人はどちらからともなく寄り添い抱き合った。
ただ言葉もなくしっかり抱きあうだけで心が通い合うようだった。
英二が郁代の顔を起こすように両手で挟み、見つめ合っていたが、やがて郁代の目が閉じられて英二の唇が郁代に唇に重ねられた。抱きしめた手に力が入り二人はさらに身を強く寄せ合う。
それが最初のキスだった。
 
・・・初めてのキスに身体を震わせる まるで少女の想いのように・・・
 
玄関を閉めるのももどかしいほど、すぐにお互いの身体を寄せ合い抱き合った。
郁代は英二の胸に抱かれる事をどれほど望んでいただろう・・・
目を閉じ英二と唇を重ねた時涙がにじみ出るのがわかった。郁代は自分が今少女の頃のような素直な気持ちになっていることに気がついていた。
お互いを確かめ合い心が潤った二人は、抱き合った身体を離しお互いの顔を見て少し照れたように微笑みあった。
 
「気持ちを楽にゆっくりしてね。」
「うん、えーちゃんとゆっくり過ごしたい。」
これまではメールでエッチなやり取りもしていたとは言っても、人妻である郁代には泊まっていくという決心をしたものの生身を合わせる戸惑いはある。
そこを乗り越えようとは思うのだったが、軽い食事のあと、英二の一緒に風呂に入ろうと誘いに、郁代はやはりまだ英二に裸体を晒す気にはなれないのだった。
英二が浴びたあと入れ替わるように風呂に入り郁代は自分の乳房を英二がどう慈しむのかを思った。
その後の風呂上りのゆったりした時間を楽しもうと、ハムとチーズを海苔でくるんだ簡単な摘みでふたりはワインを酌み交わす。
郁代は風呂上りに浴衣に着替えていた。
「こんなにゆったりした気持ちになっていいのかな?」
「どうしたらいい?」
 
・・・向かいあいグラスを合わせ見つめあう 首筋までもワインの色に・・・
 
郁代は少し酔いがまわって気持ちよくなったのか、ソファーに並んで座って指を絡めながら英二の肩にもれている。
「あまり飲みすぎないでね。」
英二が首を回して郁代に額に唇を寄せると、郁代は目を潤ませて抱きつく。
英二がシャンプーの香りに潤んだ髪を撫でながらそっと唇を寄せると、郁代も応えて唇を開く。
そっと触れるほどのキスは、やがて互に舌を絡めてのむさぼるようなキスになっていった。
 
・・・飲み干したワインが身体を染めるとき 醸し出される甘いためいき・・・
 
初めて英二と過ごす夜に郁代は少なからず緊張をしていた。待ち望んだ事とはいえ不安が心を固くしていた。
グラスを合わせる軽い音が二人の夜が始まる合図のように、郁代は心を決めたように注がれたワインを飲み干していた。
英二はそんな郁代を笑いながら見つめゆっくりと飲み始めていく。
緊張していた気持ちを解すのには、お酒の弱い郁代にはこの一杯のワインで十分だった。
浴衣のあわせからのぞく郁代の首筋はもうワイン色に染まっていた。気持ちが和らいだ郁代は自然に英二に甘えるように身体を預けていく。
 
「目をつむってるの? このまましていい?」
郁代を膝の上にかかえるようにして抱いていた英二が手を郁代の下の方へと移動させ、浴衣の裾をめくって手を差し入れようとすると、
「いきなりなんだ。優しくキスをつづけてほしいのに。髪をあげて耳元にも・・・身体中がジーンとしちゃうような優しいキス。」と郁代は笑いかける。
英二は太腿にかかっている手を抜くのも惜しく暫らくあたりを彷徨ってときに中心部に触れようとするが、郁代が身をよじるので裾から手を抜くと耳を軽くかんだり襟足に息をかけたり舐めたりし、浴衣の上から体を優しく撫でて、
「どうしてほしいの?」とじらすようにいう。
「このあとは・・・えーちゃんの好きにして。」
「じゃ、やっくり脱がせておっぱい撫でる?」
「うん。・・あ!電気は消してね。暗くして・・・お願い。」
「目を見ながらなんてしないの? 」 
「えーちゃんの目を見ながらなんてとてもダメ! 暗くして、目は瞑っちゃいます。でなきゃとても無理。」
「目瞑ってひたすら感覚を楽しむのかな?」
「そんなんじゃないのに・・・」
英二は郁代の身を抱えるようにして和室に移り、敷いてある布団に横たえる。郁代は目を閉じて静かに身を任せている。
「どこかで自分を抑えてしまいます。これは性格だと思うんだけど・・・だけど・・・何だか変わってもいいんだと思えるような気がします。えーちゃんが望むなら? というか、自分を出してしまう私をいいと思ってくれるなら。・・・」
「それがいいよ。いいときは声も出してね。 思い切り自分を出してくださいよ。その方が僕がいいのだから! そうだ、今日はリードしてもらおうかな。」 
「初めての夜なのにそんな事出来ないでしょ。えーちゃんにお任せ。でもやっぱり上はダメかも。・・・あぁもう ちょっとドキドキしてる。あ!電気は消してね。暗くして・・・お願い。」
英二は後ろから郁代をそっと抱きしめ、その力を加えながら足を絡めていく。
 
・・・戸惑いを暗闇の中に押し隠し 愛しき君を手繰り寄せいく・・・
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